原価計算の税務
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第二部 税務会計3.法人税法の「原価計算」規定の体系期末の棚卸高の評価等については、必要な規定を置くことで、企業の恣意的な算定を避けて、課税上の「売上原価」を算定する方式を採用したものと考えられる。つまり、法人税でも企業会計と同様の売上原価となるのであるが、左記の算式でも明らかなように、「期末商品(製品)棚卸高」の評価をいかに計算するかによって、損金となる売上原価が変動する。このため、法人税法では、課税の公平の観点から、棚卸資産の期末評価に関して、棚卸資産の範囲、取得価額および評価方法に関して、法人税法第22条第4項の別段の定めとして詳細な規定を置いている。すなわち、法人税法第29条(棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価の方法)では、「第22条第3項の規定により各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入する金額を算定する場合におけるその算定の基礎となる当該事業年度終了の時において有する棚卸資産の価額は……」(下線筆者)としており、棚卸資産の期末評価を行う目的を明らかにしている。したがって、法人税法第29条は、課税所得の計算に必要な「売上原価」を算定するためとして、企業の選定した棚卸資産についての評価方法が必要となる旨を規定していることに留意する必要がある。なお、上記算式の「期首商品(製品)棚卸高」も、前期の期末棚卸高であるから法人税法の規定により算定された額である。前記2.で述べたとおり、法人税法での原価計算に係る規定は、「売上原価」算定のための期末棚卸資産の評価を中心とした法体系となっている。 法人税の原価計算第一章 法人税法の原価計算の仕組み — 23

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