2.法人税法の「売上原価」の考え方すと、むろんそれはそうではないということであって、企業会計原則に盛られている会計の基準が、九分通りはそのまま税法上も受け入れられるものであることはいうまでもありません。」(渡辺淑夫・山本守之「法人税法の考え方・読み方(新四訂版)」101頁)とされる。税務上の原価計算は、前記1.のとおり、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従っていることから、法人税法では企業会計上の「基準」に該当する規定は置かれていない。一方で、法人税法では、棚卸資産の期末評価等に関しては詳細な規定を置いている(下記3.参照)が、その理由は、以下のとおり。企業会計上の売上原価は、次の算式で表される(第一部第二章「1.売上原価に関して原価計算が必要となる場合」(9頁)参照)。(商業の場合) 売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高(製造工業の場合) 売上原価=期首製品棚卸高+当期製品製造原価-期末製品棚卸高これらの算式から明らかなように、売上原価は期末商品(製品)棚卸高を差し引くことにより算出される。法人税法は、法人税法第22条第3項(各事業年度の損金の額に算入する金額)に規定する「売上原価」の額の算定を企業会計の上記算式に依拠しつつ、当期商品仕入高は外部的に実現した金額であり、当期製品製造原価は「基準」に基づいて算定されるから、原則として企業会計の算定額とし、22
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