移転価格の実務Q&A
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ことをイメージしたのかも知れません。しかし、その方法では、図表30-1の「各関連者の果たす機能」にいて、研究開発活動、製造活動、販売・マーケティング活動、一般管理活動の各機能をどれも同一に扱うことになります。たしかにどの機能も大切でしょうが、例えば、斬新な新製品開発で顧客の支持を得て売上に結びつけている企業グループであらば、研究活動が他の機能よりも相対的に高く評価しなければならないという場合もあるでしょう。米国のような広大なマーケットを対象に、包括的な販売網を武器に顧客に製品の販売展開を行っている企業グループであれば、販売・マーケティング活動の機能が、他の機能よりもより重要視され、それが利益の源泉になっているのであれば、他の機能よりも評価されて然るべきです。忘れてならないことは、機能リスクの目的は、図表30-1のような一覧表を作成することではありません。非関連者の取引における対価は、各々の非関連者が果たす機能とリスクにより決定されるとの発想から、関連者取引にもこの発想をあてはめて考えた場合に、各関連者がどのような機能とリスクを負っているかを理解することにあるのです。言い換えれば、機能リスクの分析を通じて、グループ全体としてどのように価値が創造されているかを把握することに他なりません。グループの各関連者が果たす機能と、関連者の相互依存度や相関性に目配せしつつ、価値創造に対する各関連者の貢献を究極的には把握することになるのです。ですから、まず手を動かし、把握した機能・リスク・使用される資産について文章にしてみましょう。書いてみると、意外にわかっているようで理解していなかったり、相互の事項に齟齬や矛盾があることなどに気づきます。また、ローカルファイルを作成しようとしている会社の人は、知らない事項があることに気づくでしょう。そうした作業を経て、そのエッセンスが、機能リスク一覧表としてできあがるのです。こうした分析や会社ごとの理解ができて初めて、次の作業ᴷᴷすなわち比較対象取引の候補選びとなる比較可能性分析に入っていくことが可能とⅢ.移転価格分析│129

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