り、煩雑な申告調整を強いられる可能性もある。中小企業は、収益認識会計基準を強制適用されるわけではないが、任意に適用することは可能である。とはいえ、平成30年度税制改正で導入された資産の販売等に係る収益に関する改正規定は、その適用にあたり、直接的には、同基準を適用しているか否かを問うものではない。すなわち、中小企業にも適用され得るものである。また、同改正では、返品調整引当金や長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例といった既存の規定を廃止等する改正も行われている。これらの点で、中小企業にも改正の影響があることはいうまでもない。それでは、改正法はその具体的内容という面において、どのような、どの程度の影響力があるというべきか。この点は即答が難しい。資産の販売等に係る収益に関する改正規定が実務の中でどのようにワークし、実際の適用場面でいかなる問題を提起するのか、という点について、現段階で詳説することは困難である。しかしながら、政令を含む改正規定及び改正された関係通達の下で、実務は動き出している。筆者は、このような状況に鑑み、資産の販売等に係る収益に関する改正規定(法人税法22条の2)の逐条解説や収益の計上に関する事例の研究等を通じて、今後、様々な場面で起こり得る問題又は紛争の予防ないし解決にいくらかでも貢献することを目的として、平成31年4月から令和4年9月までの86回にわたって株式会社プロフェッションネットワークが運営する税務・会計Web情報誌Profession Journalにおいて「収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究」を連載させていただいた。本書は、これに加筆・修正を行い、上梓するものである。第Ⅰ部で収益認識会計基準の内容、第Ⅱ部で同基準の公表に伴い行われた法人税法上の収益計上時期・計上額に関する平成30年度税制改正の内容を概観した上で、第Ⅲ部で法人税法22条の2の規定を逐条的に解説し、第Ⅳ部においてQ&A形式で個別論点や事例研究を行う。ただし、本書は、財務省主税局又は国税庁の解説や通達等の内容をそのまま
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