逐条解説 法人税法第22条の2
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収益をいつ、いくらの金額で計上すべきであるかは、法人税法上の所得金額を適正に計算するために、極めて基本的かつ重要な論点の1つである。これまで、かかる収益の計上時期(年度帰属)及び収益の額の論点を規律する最も重要な規定は、法人税法22条という所得計算の通則規定であったが、平成30年度税制改正では、法人税法22条よりも、資産の販売等に係る収益に関して明確で具体的な内容を有する法人税法22条の2がここに加えられた。法人税法22条の原型は、昭和40年の法人税法全文改正で作られた。同条に関する改正を振り返ると、昭和42年に公正処理基準に従った計算を要請する規定(現行法4項)が挿入され、その後、平成10年、平成12年、平成18年、平成22年で資本等取引(現行法5項)に関する細かな改正がなされたのみである。よって、インパクトのあるものとしては、今回の改正は昭和42年以来のものといってよい。今回の改正は、平成30年3月30日に民間の会計基準設定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)によって公表された企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」という)及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」に伴うものである。租税法の代表的な教科書においては、「収益および費用の年度帰属をめぐって、きわめて多くの租税争訟が生じているが、これらの個別の問題の大部分については、企業会計上その取扱は白紙の状態である」ことが指摘されてきたが(金子宏『租税法〔第24版〕』358頁(弘文堂2021)の脚注(20))、収益の認識については、わが国にも包括的で詳細な会計基準が誕生したことになる。連結財務諸表のみならず個別財務諸表にも適用されるこの収益認識会計基準は、実現主義や販売基準などの収益に係る諸原則を定める企業会計原則に優先するものとされている。仮に、同基準と法人税法それぞれにおける収益認識ないし収益計上時期のルールが相違する場合には、企業は法人税の申告にあたはじめに

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