第1節 法人税法22条の概要●旧法の規定が抽象的であるため、総益金又は総損金の意義について議論が多かったこと●総益金・総損金と益金・損金はいずれもグロスの概念であるとすると、総益金と益金の関係及び総損金と損金の関係についても明らかではなかったこと●その後における企業会計の発達等を考慮したこと度の所得の金額…による。」とし(旧法法8)、「内国法人の各事業年度の所得は、各事業年度の総益金から総損金を控除した金額による。」と規定していた(旧法法9①)。そして、9条2項以下に現在の別段の定めに相当する個別の「益金」又は 「損金」の算入又は不算入の規定が配置されていた。明治32年に法人に対する所得税が創設されて以来、維持されてきた課税所得の計算規定である旧法人税法9条を、昭和40年の全文改正において現行法人税法22条2項のように改めた理由として、次の諸点が挙げられる。改正当時の説明資料では、法人税法22条は、規定の明確化を図るために新たに設けられたものであって、これにより従来行われていた所得計算の原則を変更するつもりはないことが強調されている(国税庁『昭和40年版 改正税法のすべて』102頁など参照)。このこととの関係では、従来、法人税法の課税所得概念ないし益金・損金概念については、純資産の増加をもって課税所得と捉える純資産増加説が支持されてきたことに目を向けておきたい。純資産増加説は、利益計算について財産法的なものと密接な関連を持つものと解されていた。昭和40年の改正法は、課税所得概念ないし益金・損金概念について、純資産増加説の考え方を背景としつつも、収益からこれに対応する原価・費用・損失を控除して課税所得を算出するという損益法を採用(とりわけ、原価・費用は収益に対応させて計上するという費用収益対応の原則の採用)したものであると解する。すると、益金の意義に関する次の見解に理解を寄せることができよう(中里29
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