第2章 法律を知る 〜借地借家法を知れば怖くない〜29するものである。(2)一般原理「事情変更の原則」との関係 民法の一般原理に「事情変更の原則」というものがある。 「事情変更の原則」は、民法第1条第2項の「信義誠実の原則」を根拠とするものであり、契約締結時に前提とされた事情がその後変化し、元の契約どおりに履行させることが当事者間の公平に反する結果となる場合に、契約当事者は契約解除や契約内容の修正を請求し得るとする法原理である。したがって、この一般原理としての「事情変更の原則」は、借地借家法第11条及び同法第32条の趣旨である事情変更と類似するものである。 しかし、一般原理としての「事情変更の原則」は、事情変更の著しさや、事情の変更に関して当事者に予見可能性がなかったことを要件とし、その適用は極めて限定的である。現に、最高裁判所は、「事情変更の原則」を一般原理としては認めても、現実にそれを適用して判決を下したことはない。 これに対して、借地借家法第11条及び同法第32条の適用においては、事情変更の著しさも、当事者に予見可能性のないことのいずれも要件とされておらず、広くその適用が認められている。そのため、同条文を根拠にした賃料増減請求は、賃貸借契約の現場において広くなされており、また、裁判においても広く認められている。 さらに言えば、後述の第5章で述べるとおり、最高裁判所は、賃料増減請求権を制約する「特約」の効果を、限定的に解釈しようとする立場にあると思われるが、このように特約を限定的に解釈する考え方も、賃料増減請求権が、一般原理である「事情変更の原則」を超えて広く認められていることと、整合する関係にあると考えられる。
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