激変する既存住宅ビジネスと税制活用
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第4章 空き家の活用促進と既存住宅の流通促進に向けて196る場合、様々なインセンティブが付与されている。例えば、住宅ローンほど、低金利かつ長期の資金調達手段はない。ローン減税や贈与税の非課税制度などといった措置も講じられている。今後の日本において、住宅の除却を促進していくためには、単純な補助金に頼るのではなく、新築と同様のインセンティブを付与することが求められる。(2)新しい税制の創設によって、除却のインセンティブを確立する① 所得控除の創設現行の税制においては、住宅を除却(解体)しても、所得税における雑損控除のような所得控除をすることはできない。雑損控除は、あくまでも、災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合に限られ、除却・減築をした場合には適用されない。除却・減築も、雑損控除の対象に加えてもいいのではないだろうか。なお、住宅の除却に対しては、インセンティブを与えるために、補助金を出している地方自治体もある。補助金自体は非課税だが、解体費用が雑損控除対象となるなら、解体費用から補助金自体を控除した残額を雑損控除とするのが、担税力を考慮する税法の考え方とも合致する。政策的配慮として、解体工事費に対して、補助金を控除せず、雑損控除を適用できるのであれば、補助金はまるまる個人の収益となり、空き家をなくすことに対してインセンティブが強く働くため、このような制度創設も有効であろう。② 保有税(固定資産税等)の軽減住宅を除却すると、居住用ではなくなるので、固定資産税等の住宅用地の課税標準の軽減特例が適用されず、税額が高くなる。また、除却しなくても、平成27年度税制改正で導入された特定空き家に指定された場合には、固定資産税等の住宅用地の課税標準の軽減特例が適用されず、更地並みの税額となる。この制度は、空き家を放っておくことに対する罰則的な税金コストといえる。

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