不動産有効利用のための 都市開発の法律実務
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344 第5部 建築基準法とその法的性格の距離を保たなければならない」(民法234条①)と,建物が境界線との間におくべき距離をはっきりと規定しています。(注)境界線からの距離を民法で50cm以上と定めた趣旨については,巻末の《参考資料――》「建物と境界線との距離をめぐる建築基準法と民法との関係」参照。(境界線付近の建築の制限)第 234条① 建物を築造するには,境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。(昭和33法62本項改正)②  前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは,隣地の所有者は,その建築を中止させ,又は変更させることができる。ただし,建築に着手した時から1年を経過し,又はその建物が完成した後は,損害賠償の請求のみをすることができる。もっとも,「規定と異なる慣習があるときは,その慣習に従う」(民法236条)という規定もあり,たとえば,都心の商業地のように境界線ぎりぎりまでくっつけて建物を建てる慣習のある地域では,その地域で慣習とされている距離を置いていればいいのだとも規定しています。ここでは,そういう慣習のない地域のことだとして説明をします。たとえば第1種中高層住居専用地域などでは,距離を50cmより少なくして建築するという慣習は,普通はないでしょう。あるいは,この民法の規定は強行法規ではないので,隣地間で相互に話し合いがつき,合意すれば,50cm未満の距離に建物を建築しても,それはそれでかまわないわけです。問題は,境界線より50cm未満の距離に建物を建築するという慣習のない地域で,かつ,隣地所有者が合意していない場合です。このような場合について,民法では,「規定に違反して建築をしようとする者があるときは,隣地の所有者は,その建築を中止させ,又は変更させることができる」(民法234条②)と規定しています。したがって,隣地所有者はこの規定に基づいて,その建築物廃止または位置変更を建築主に請求し,建築主が応じないときは,裁判所にその処分を求める訴訟をすることになります。もっとも,同条で,「ただし,建築に着手した時から1年を経過し,又はその建物が完成した後は,損害賠償の請求のみをすることができる。」と規定され

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