家族信託をもちいた財産の管理・承継
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第3章 家族信託の関係者の留意事項222委託者の意思能力 1 遺言・家族信託の無効本書の各章の事例が示すように、家族信託は、主に財産の管理や円滑な承継・相続に関する課題の解決策として活用されており、その利用者のほとんどは、一定程度以上の資産を持った高齢者である。財産の円滑な承継・相続に関しては、被相続人による自らの死後の意思の実現のため、または、残された相続人の遺産分割協議の負担軽減や相続人間の争い回避のために、遺言が活用されている。なお、超高齢社会の進行に伴い、遺言の作成件数は増加傾向にあり、日本公証人連合会の公表では、公正証書による遺言だけでも2016年に10万5,350件が作成されている。しかし、遺言の利用にあたっては、留意しておくべき事項がある。例えば、遺言によって、法定相続の配分とは違う特定の相続人を利する配分を行う場合、他の相続人の遺留分を侵害すれば、相続人間で遺留分減殺請求が行われる可能性がある。さらに、相続人が、遺留分の範囲のみでなく、遺言の存在そのものへ不満や疑問を抱いている場合には、遺言作成時の被相続人の意思能力の欠如を主張し、遺言が無効とされる事態も起こり得る。そのような事態を避けるには、公証人及び証人が遺言者の意思能力を確認する公正証書による遺言を作成することが望ましいが、ごく稀に、公正証書の作成前後の遺言者の状況等も判断材料となって、無効とされることもあり、留意が必要である。家族信託についても、遺言と同様に、相続人間の遺留分減殺請求を免れ2第2節 委託者の意思能力
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