家族信託をもちいた財産の管理・承継
41/52
第2章 家族信託の活用と留意事項146足る(信託法34条1項2号ロ)。しかしながら、実際には、受託者であることを明示した銀行口座を開設するのが望ましい。(3) 信託設定後の管理・運用受託者であるBは、信託期間中、信託された賃貸用不動産を管理し、必要に応じてその管理のために信託された金銭を使用する。信託開始間もない間で、賃料収受口座に(最初の賃料収受時期前で)残高がないと、その間に発生する業務委託費用その他の費用の支払いが足りないことがあり得るため、当初の段階でいくらかの(想定される費用+α)の金銭を賃料収受口座に入れておくことが望まれる。(4) 信託終了時の対応① 信託期間満了による終了委託者兼受益者の死亡により信託が終了する場合、帰属権利者であるBが信託財産を取得することになる。Bは、受託者兼帰属権利者として、信託財産である不動産についてB(の固有財産)名義とする登記を行うとともに、受託者B名義の銀行口座において、その時点で残存する費用を支払う。賃貸用不動産の所有者については、受託者であるBから(固有財産で所有する)Bに変更になるものであって、賃借人からすると相違はないが、賃貸人の地位の移転があるという整理も考えられるため、必要に応じて通知(名義変更、賃料収受口座の変更)を行うことになる。② 法定事由での信託終了信託について、当初想定している信託期間の満了ではなく、信託法に規定する法定事由(信託法163条)での終了となることがあり得る。この場合、委託者兼受益者が死亡していないことから、特段の定めがない場合は、委託者を帰属権利者として指定する旨の定めがあったものとみなされ(同法182条2項)、委託者に信託財産であった財産が帰属することになる。
元のページ
../index.html#41