日本版司法取引と企業対応
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112務員Yに対して贈賄することを話し合った。 この話合いに基づき、コンサルタントCと従前から親しい関係にあった企業Bの担当者は、コンサルタントCに外国公務員Yに対する贈賄を指示し、コンサルタントCは、企業A及び企業Bから受領した報酬の一部をYに贈賄した。 贈収賄は、限られたメンバーにより閉じられた環境で行われる犯罪であり、被害者と呼べる者が存在しないことから、被害者が存在する他の犯罪と比較して露見しにくい犯罪である。 そのため、捜査機関は、しばしば他の事件の捜査を端緒として贈収賄事件の端緒を把握している。 たとえば、コンサルタントCに対して租税法違反(脱税)の疑いで捜査が行われ、その過程で判明した使途不明金についての捜査を進める中で、コンサルタントCが外国公務員に贈賄した事実が発覚することがある。 このような場合、従来の刑事司法制度を前提とすると、コンサルタントCとしては、外国公務員贈賄の事実を捜査機関に認めることは、租税法違反の罪のみならず外国公務員贈賄罪の責任をも負うことを意味し、積極的に外国公務員贈賄に関する事実を捜査当局に申告するインセンティブは生まれにくい。 前記のケースにおいて、日本版司法取引が導入された場合、捜査機関が外国公務員贈賄に関する事実を把握する道が大きく開けることとなる。コンサルタントC贈賄指示共謀賄賂企業B企業A外国公務員Y

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