日本版司法取引と企業対応
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30の捜査・訴追に協力するということは、ほとんどの場合、当該企業関係者自らが関与した犯罪の共犯者に対する捜査・訴追に協力することを意味することになると思われる。 たとえば、ある企業の取締役と従業員がプロジェクトの受注をもくろみ、共謀して、発注権限を有する公務員に対して贈賄したという例を取り上げると、企業の従業員が取締役や賄賂を受け取った公務員に対する捜査・訴追に協力することも、「他人」である取締役や公務員の捜査・訴追に協力することとなり、司法取引の対象となりえ、当該従業員は、取締役や公務員の捜査・訴追に協力する見返りとして、自らの贈賄の罪について訴追を免れたり、刑の軽減を得ることができる可能性がある。 日本版司法取引は、あらゆる犯罪に適用があるわけではない。日本版司法取引が適用される犯罪は「特定犯罪」と呼ばれる一定の犯罪に限定されている。 この限定は2つの側面からなされている。すなわち、①日本版司法取引の当事者となることができるのは「特定犯罪」に係る被疑者・被告人に限られるということであり、②捜査・訴追協力の対象となる「他人の刑事事件」とは「特定犯罪」に係る刑事事件に限られるということである。 たとえば、特定犯罪の被疑者として取調べの対象となっている者が、他人の犯した特定犯罪以外の犯罪について情報を持っているからといって、当該特定犯罪以外の犯罪について、いくら他人に対する捜査・訴追の協力をしたとしても、日本版司法取引の対象となることはない。❶ 特定犯罪の種類 改正法350条の2には、「特定犯罪」とされる犯罪が列挙されているが、それらを分類しつつ整理すると次のとおりである。2「特定犯罪」について

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