日本版司法取引と企業対応
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28 ここで、日本版司法取引の概要について、いくつかの特徴を紹介しながら概説することとする。 日本版司法取引は、被疑者・被告人が検察官の捜査・訴追に協力するのと引換えに、検察官が被疑事件・被告事件について不起訴処分や求刑の軽減等を約束するという取引を認める制度であるが、被疑者・被告人による捜査・訴追の協力であれば、すべからく取引の対象となるわけではない。 まず、日本版司法取引は、被疑者・被告人が「他人の刑事事件」に関する検察官の捜査・訴追に協力するのと引換えに、検察官が被疑事件・被告事件について不起訴処分や求刑の軽減等を約束するという制度とされている。 したがって、被疑者・被告人がいくら自らの犯した罪を認め、積極的に検察官に対して自らの犯した犯罪を立証する証拠を提供したとしても、それは日本版司法取引における取引の材料とはならない。 後述するように、特別部会では、自らの犯した罪を認めることにより、検察官が不起訴処分や求刑の軽減等を約束するという制度を導入することの是非も検討されたが、犯罪を犯した者が自らの罪を認めるのは当然であるとの国民一般の認識も根強く、犯罪の認否を取引の対象とするのは国民の正義の感情に馴染まないという懸念もあったようであり、結局、日本版司法取引では、「他人の刑事事件」に関する検察官の捜査・訴追に協力する場合に限り、検察官と取引を行うことができることとした。 ここで、「他人の犯罪」の訴追に協力するとは、典型的には、被疑者・被告人自らが関与した別の犯罪の共犯者(すなわち他人)に対する訴追に日本版司法取引の概要Ⅱ1「他人の刑事事件」に関する捜査・訴追協力が必要であること

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