家族信託の活用事例
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11第1節 家族信託が注目されているのはなぜか 遺言は、遺言者の死後に財産をどのように承継させるかを決められるだけであり、財産を管理することはできません。 たとえば、浪費家の子や認知症の妻のために遺言者の希望に添って財産の管理をしてほしいと思っても遺言では実現は困難ですが、遺言代用信託契約を結べば、浪費家の子に浪費させないように、あるいは認知症の妻の生活を支援してもらうように、受託者に遺産を管理してもらうことができます。 また、たとえば自宅を自分が死んだらまず妻に相続させ、妻が死んだら先妻との子に相続させたいと考えても、二代先の承継者を指定する内容の遺言(後継ぎ遺贈)では効力は認められませんが、後継ぎ遺贈型受益者連続信託(本書133頁参照)を利用すれば、希望を実現することができます(第2章ケース2参照)。 遺言は何度でも書き替えることができますが、信託行為で信託の変更ができないと定めた遺言代用信託契約をすれば、本人の死亡後の財産承継を確定させることができます。4 種類株式、属人的株式 事業承継で自社株を後継者に円滑に承継する方法として、種類株式(会社法108)、全株式譲渡制限会社の属人的株式(会社法109②)の利用のほか、信託の利用も選択肢になります。 たとえば株主としての発言権を維持しつつ後継者に株式を移転させたいときに、種類株式を利用して、拒否権付株式(会社法108①八、323)を手許にとどめて普通株式を後継者に譲渡する方法、無議決権株式(会社法108①三)を後継者に譲渡する方法、属人的株式を利用して株主ごとに異なる扱いをする定めを設けて会社支配権を確保した上で後継者に株式を譲渡する方法などのほか、信託を利用して指図権(本書95頁参照)を留保しつつ後継者に受益権を取得させる方法が考えられます。 種類株式を発行していない会社が種類株式を発行するためには定款変更が必要であり(会社法108②)、定款変更には株主総会の3分の2以上の賛成を要する特別決議が必要となります(会社法466、309②十一)。既存株式を種類株式

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