家族信託の活用事例
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10第1章 家族信託の基礎知識詐欺強迫による取消し、特定商取引法に基づくクーリングオフ、公序良俗違反による無効など一般規定を利用しなければ被害を回復できないなど、財産保全の力が弱いという問題があります。 信託では、自ら受益者となる信託契約を締結すれば、自ら信託目的を定めて、受託者に信託財産を投機的に運用させたり、将来、子や孫に財産を贈与したりすることができますし、重要な財産についてだけ受託者に管理を任せてその他の財産の管理処分権を持ち続けることもできます。能力がある時点での判断に基づいて処分したり、贈与したりできるようにするニーズに対応することができます。 信託の設定をしたからと言って、被後見人になった場合のように資格制限を受けることもありません。判断力を失う前でも、体力の衰えを補うために信託を利用することができます。 本人が信頼できる人を受託者に選ぶことができますし、信託設定後すぐに効力を発生させて利用することができます。 また信託財産は受託者のもとに移り、委託者は管理処分権を失いますので、悪徳商法等の被害に遭うこともありません。 後見と信託を組み合わせることで、それぞれの制度のデメリットを打ち消し、より多くのメリットを享受する相乗効果を期待することもできます(第2章ケース4)。3 遺言 遺言と信託は、どちらもこれを利用して、本人(遺言では遺言者、信託では委託者)が死亡した後の財産の承継を定めることができる制度です。信託は遺言で設定することもできますが(遺言信託)、ここでは遺言による財産の承継と、遺言代用信託(本書131頁参照)による財産承継を比べてみます。 遺言は検認や執行の手続き等を経なければならず、遺言事項の実現に時間を要する場合がありますが、遺言代用信託を利用すれば、本人の死亡により受託者が直ちに受益者に対して給付を行うことができます。

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