家族信託の活用事例
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9第1節 家族信託が注目されているのはなぜかや代理の制度を利用しては事務処理をすることができなくなり、本人の希望が叶えられなくなるおそれがあります(民法653、111参照)。たとえば、本人が不動産を売却したり、株式を譲渡しようとしていたところ、本人や受任者が意思能力を失ったり、後見が開始した場合には、売却や譲渡手続を進めることができなくなってしまいます。 信託を利用すれば、本人や受託者が死亡したり、破産手続や後見が開始したり、意思能力を失っても、信託自体が終了することはありませんので、設定した信託目的に従って信託事務が進められ、本人の希望を叶えることができます(第2章ケース3参照)。2 後見 後見と信託は、どちらもこれを利用して、判断能力のない本人(後見では被後見人、信託では委託者)の財産の管理等を他人(後見では後見人、信託では受託者)が行うことができる制度です。 後見は、判断能力のない本人を保護、援助するための制度ですので、後見人は、本人の不利益になるような財産の管理をすることはできません。たとえば、後見人は、本人の財産を投機的に運用したり、相続対策のために処分したり、他人に贈与したり、法定相続分を下回る内容の遺産分割協議に応じることはできません。また、後見が開始すれば、本人は被後見人として、すべての財産の管理処分権に制限を受け、株式会社の取締役や監査役に就任できない(会社法331、335)、公務員になれない(国家公務員法38一、76、地方公務員法16①、28四)、風俗営業(風営法4一)や古物営業(古物営業法4一)などを営むことができない、印鑑登録ができないなどの制限を受けます。 また、後見は判断力を失った人のための制度ですので、体は不自由だけれど判断能力に問題がない人は利用できません。 法定後見では誰が後見人になるか審判までわかりません。任意後見ならば後見人候補者をあらかじめ決めておくことができますが、本人は後見開始後も管理処分権を失いませんので、悪徳商法等の被害に遭った場合などは意思無能力、
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