家族信託の活用事例
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6第1章 家族信託の基礎知識 受託者は、受託者の職務として信託目的に従って信託財産の管理処分等を行うだけで、信託財産に対して固有の利益を有しません。また、受託者の死亡や破産などで信託財産が相続財産や破産財団とされてしまっては信託の目的を達成することはできません。 そこで、信託財産は形式的に受託者に属しますが、信託財産に属する財産は、受託者が死亡しても受託者の相続財産にならず(法56①一、60)、後見が開始しても後見人が受託者本人の財産として管理することはなく(法56①二、60)、受託者が破産しても破産財団に属さず(法25)、受託者の固有財産にかかる債権者が差し押さえることもできない(法23)ものとされています。 このように、委託者や受託者の死亡や後見開始、破産、差押え等に影響を受けることなく、受益者のために信託を継続することができるのです。 信託財産は受益者のものでもありませんので、受益者の債権者が信託財産に属する財産を直接差し押さえることはできませんし、受益者について破産手続が開始したときに信託財産に属する財産が破産財団に組み入れられることもありません。この意味で信託財産は「誰のものでもない財産」と呼べるかもしれません。しかし、受益者の債権者は受益権を差し押さえることはできますし、受益者について破産手続が開始すれば受益権は破産財団に組み入れられます。 差押手続や破産手続で受益権が換価されれば、信託の存続が困難な状況になることもあるでしょう。2 信託の柔軟性 信託法の定めの多くは信託行為に別段の定めを置くことにより変更が認められる任意規定、デフォルトルールであり、委託者がかなり自由に信託の内容を定めたり、信託の枠組みを決めたりすることができます。 また、受託者は、信託財産に属する財産の管理、処分だけでなく、信託の目的を達成するために必要な行為を行う権限を有し(法26)、義務を負っています(法2①・⑤)。 信託では、希望を実現するために柔軟な設計と運用をすることができるので
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