図解でわかる新民法〔債権法〕
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254の間にさらに議論が進み、さらなる修正や見直しが加わることもあるかもしれません。これからの解釈問題そこで、これに関連して、いくつか留意しておくべき点を指摘しておきたいと思います。第1に、今回の改正論議の結果、新設や改正が見送られた考え方や判例法理が完全に否定されたわけではないという点です。条文を見る限り大きな変更がない部分は、従前の判例解釈や今後の実務の動向に委ねられています。そのため、条文化されていなくても、民法の条項に反映されていない判例法理や解釈は生きているはずです。ただ、条文化の見送りは、根本的な解決を先送りしたもので、これからも争われることになるものです。第2に、今後の議論の余地を残しながら、解釈に委ねられる結果となった論点が多数あります。例えば、改正が見送られた項目や限定的な新設条文が設けられた事項についても、信義則や権利濫用等の一般条項を通して、新たな追加的な解釈が上乗せされる余地があるかもしれません。また、基本的な考え方を示すだけに留まり、具体的な運用は解釈に委ねられている重要項目も少なくありません。広く一般に向けて開かれた民法である以上、各自の民法の条項をどう読むか、どう解釈するかについては、様々な解釈の可能性があります。本書では改正法の条文そのものを引用しながら解説していますが、それを各自どう読むかによって新たな解釈が生まれてくる可能性もあるでしょう。もともと民法の条文については、刑事法のような罪刑法定主義があるわけでもないので、類推解釈や拡大解釈が許容される素地があります。その解釈が今度どうなるかは、これからの大きな課題となります。例えば、個人保証の制限が適用されない経営者の配偶者による保証契約について、信義則や権利濫用法理によって保証契約の効力が争われる余地もあり

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