税理士春香の民法講座
10/16

-14-第1章国税通則法と民法の接点山 川  2項に善意の第三者を保護する規定が追加されたことと、1項の文言がわかりやすくなったことがポイントだね。そして、この事件に関しては、修正申告により、税額を確定する意思がなかったという納税者の真意を税務署も知っていたから、当該修正申告は無効だ、という結論になんら影響がないことになるね。春 香  そうですね。     ただ、この事件については、一審と二審の判決理由が異なっていますから、以前、この判決について議論したときには、所長も山川さんも、当該修正申告は心裡留保ではないのでは? とのお考えでした。山 川  あぁ、そんなこともあったねぇ。     一審は、最高裁昭和39年10月22日判決*11を参考に、その修正申告について、国税通則法や所得税法などに定めた方法以外に、その是正を許さないのなら、納税義務者の利益を著しく害するとは認められず、心裡留保に基づいて無効を主張することは許されない、といって、一審判決には「心裡留保」という文言が出てくるんだよね。     ところが二審は、いったん確定的な意思をもって、修正申告をしており、そもそも心裡留保にもあたらない、といった。春 香  そうです。その時の山川さんのおっしゃり方で、ワタシは、山川さんもこの事件は心裡留保にあたらないって思っておられるんだろうなって感じたんです。山 川  うん、たしかに、これって心裡留保かなぁ、とは思ってた。所長は、何て、おっしゃったんだっけ?春 香  所長は、典型的な心裡留保とはどうも異なるような気がするって。二審判決がいうように、修正申告書に記載した文面が、修正申告により税額を確定する意思がなかったとは読み取れず、むしろ、とりあえず、*11 最高裁所昭和39年10月22日判決(TAINS Z038-1324)

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る