民法[相続法制]改正点と実務への影響
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第1節 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)41形成における他方配偶者の貢献、協力の度合いが高いものと考えられ、そのような状況にある夫婦が行った贈与等については、類型的に、当該配偶者の老後の生活保障を考慮して行われる場合が多いといえます。そこで、相続税法上の贈与税の特例対象期間との平仄をあわせ、婚姻期間20年以上の夫婦による贈与等を要件としています。 なお、婚姻後に離婚し、その後、同じ相手同士で再婚した場合のように、婚姻と離婚を繰り返した場合には解釈に委ねられることとなりますが、相続税法上の贈与税の特例に関する相続税法施行令第4条の6第2項では、「配偶者でなかつた期間がある場合には、当該配偶者でなかつた期間を除く。」と規定していることに鑑み、配偶者であった期間を通算することになると考えられます。② 贈与等の対象物は居住用不動産(土地・建物)であること 贈与税の特例における立法趣旨を踏まえると、居住用不動産の贈与等については、類型的に相手方配偶者の老後の生活保障を考慮して行われる場合が多いといえ、民法上も特段の配慮をする必要があること、居住用不動産については老後の生活保障という観点で特に重要なものであること等を考慮し、贈与等の対象物は居住用不動産に限定されています。 この点、建物が居宅兼店舗についての贈与等に関しても本推定規定が及ぶかどうかについては、当該不動産の構造や形態、さらには被相続人の遺言の趣旨等により、事案ごとに判断していくことになると考えられます。なお、相続税法上の贈与税の特例では、居住用部分から優先的に贈与を受けたものとして配偶者控除を適用して申告することができ、また、居住用部分がおおむね90パーセント以上の場合はすべて居住用不動産として扱うことができることとされていることからすれば(国税庁タックスアンサーNo.4455)、少なくとも居住用部分は本推定規定の適用があると考えることができます[8]。

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