民法[相続法制]改正点と実務への影響
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第1節 配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)39第 1 節配偶者保護のための方策 (持戻し免除の意思表示の推定規定)1趣 旨 相続人の具体的相続分を算定するに当たっては、特別受益に該当する生前贈与等を相続財産に持ち戻した上で、受贈者等の相続分の額から生前贈与等の価額を控除しますが、被相続人による特別受益の持戻し免除の意思表示がなされている場合には、特別受益に該当する生前贈与等を相続財産に持ち戻す必要がなくなる結果、受贈者等はより多くの財産を取得することができます。 現行法上、配偶者に対する贈与に対して特別な配慮をしているものとして相続税法上の贈与税の特例という制度がありますが、これは、居住用不動産は通常夫婦の協力によって形成された場合が多く、夫婦の一方が他方にこれを贈与する場合にも、一般に贈与という認識が薄いこと、居住用不動産の贈与は配偶者の老後の生活保障を意図してされる場合が多いことなどを考慮して設けられたと説明されています。 民法上も、配偶者に対して行われた一定の贈与等について、贈与税の特例と同様の観点から一定の措置を講ずることは、贈与税の特例ともあいまって、配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活保障をより厚くするものといえ、一般的な被相続人の意思にも合致するものと考えられます。 そこで、配偶者保護の方策の一環として、婚姻期間が20年以上の夫婦

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