民法[相続法制]改正点と実務への影響
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第1章 配偶者の居住権を保護するための方策6体的相続分からその価額を控除することを要しません。 居住建物の一部のみを無償で使用していた場合には、その部分についてのみ無償で使用することができます。例えば、2階建ての建物について、1階部分を被相続人の子が店舗として使用し、2階部分を配偶者が居宅として使用していた場合には、配偶者は、短期居住権に基づき当該建物の2階部分に居住できるものの、新たに1階部分まで使用できるようになるわけではありません。配偶者短期居住権はあくまでも配偶者が相続開始時に享受していた居住利益を、その後も一定期間保護することを目的とするため、従前と同様の形態で居住することができるにとどまり、それ以上の利益を配偶者に付与することは相当ではないというのが理由です。 また、配偶者が短期居住権を取得した場合であっても、相続開始前から配偶者と同居していた他の相続人に対して当該建物からの退去を求めることまでは想定されていません。当該建物は遺産分割終了時まで共同相続人間での共有に属し、他の相続人も各自の持分に応じて当該建物を使用できるほか(民法(以下「民」と略記)898・249)、最高裁平成8年12月17日判決に従い他の相続人に使用借権が認められる事案では、他の相続人は、これを占有権原として主張することもできるからです。(3) 収益権限 配偶者短期居住権については、居住建物の「使用」権限のみが認められ、「収益」権限は認められていません。そのため、配偶者が居住建物を第三者に転貸借するなどして収益を得ることはできません。配偶者短期居住権は、あくまでも配偶者の短期的な居住権を保護するために新設された権利であり、かかる趣旨に照らすと、配偶者に収益権限まで認める必要はないというのが理由です。 もっとも、配偶者が相続開始前に居住建物の一部について収益権限を有していた場合には、通常その部分については被相続人の占有補助者であっ
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