小規模社会福祉法人の法人運営と財務管理
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これを受けて平成24年7月の財務省予算執行調査においては、「特別養護老人ホームについては、収支状況が改善するとともに、内部留保も積み上がっている状況」と報告され、「社会福祉法人の財務諸表等については、ホームページでの公表を義務付けるなど、透明性・公正性を高めるべき。」と指摘されています。その後の規制改革会議においても内部留保の問題が取り上げられるなか、厚生労働省が意見を述べています。一方、社会福祉法人団体等からは「内部留保の多くは、固定資産である事業用資産に投入されており、現預金として積み立てられているわけではない。」「今後老朽化した施設の建替えが必要であり、建替えに備えた内部留保が必要である。」といった意見が述べられています。⑤ 財務諸表(計算書類等)公表の問題規制改革会議において、社会福祉法人が多額の補助金や優遇税制を受けているにもかかわらず財務諸表の公表が行われていないことが指摘されたことから、平成26年6月に閣議決定された規制改革実施計画において、「全ての社会福祉法人について、平成24年度分以降の財務諸表の公表指導と状況調査」「平成25年度分以降の財務諸表について、全ての社会福祉法人における公表」が提言されました。この提言に従い、平成26年5月に社会福祉法人審査基準が改正され、「現況報告書並びに添付書類である貸借対照表及び収支計算書について、インターネットを活用し、公表しなければならないこと」が通知されました。しかし、ホームページ又は広報誌のいずれかで公表を行った社会福祉法人の割合は全体の半数程度にとどまる状況であるため、規制改革会議のメンバーからは公表が不十分であると厳しく指摘されています。2社会福祉法改正の概要今回の改正は、このような社会福祉法人に対する課題を解消するため、社会福祉法人の公益性・非営利性を徹底するとともに、国民に対する説明責任及び地域社会に貢献する法人の在り方を確立する観点から、主に、経営組織のガバナンスの強化、事業運営の透明性の向上、財務規律の強化、地域における公益的な取組みを実施する責務、行政の関与の在り方の見直しなど制度の見直しを図るものです。① 経営組織のガバナンスの強化理事、監事等の役員やこれらの者の権限、責任及び法人の運営など社会福祉法に規定されている社会福祉法人の経営組織は、社会福祉法人制度発足当初以来のものであるため、役員の選任、権限や責任が明確ではなく、またこれを監督すべき評議員会は法律上設置が任意で92 制度改革の背景と社会福祉法改正の概要
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