歯科医院のマネジメント読本
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はしがき少子高齢社会の進展により社会保障制度の維持が危ぶまれるなか、毎年のように医療費削減が声高に叫ばれるなど、医療を取り巻く環境は厳しさを増しています。2025年には我が国の人口の3分の1が高齢者となり、患者年齢層のバランスが変化する一方で、めざましい医学の進歩により診療方法も多様化しています。このような状況にあって、歯科医師の開業環境は一昔前とは大きく変化しています。「開業する」ということは、医療機関を「経営する」ということです。経営の主要な要素がヒト・モノ・金・情報・技術であることはよく知られていますが、教育課程において、その要素を活用した経営ノウハウにも触れている歯学部や歯科大学は決して多いとはいえません。医業に精通した経営支援の専門家集団である我々、メディカル・マネジメント・プランニング・グループ(MMPG)の会員が、医療機関の開業支援や経営コンサルティングを行うなかで日々感じるのは、「日々の診療を充実させ、安定したクリニック経営を実践するためには、院長先生のマネジメント力が欠かせない」ということです。本書では、歯科医院経営の実務に精通するMMPG会員事務所の税理士およびコンサルタントを執筆者として、開業している歯科医師の先生方が、数字に強くなり、経営センスを身に付けて自ら歯科医院をマネジメントできるようになるためのノウハウをコンパクトにまとめています。まず序章では、歯科医院の経営の現状と課題を取り上げ、超高齢社会に突入した我が国において、これから開業する歯科医療の経営環境がどのようなものであるか、また、このような環境下で生き残るにはどのようにすればいいのかといった経営課題と、これからの歯科医院に期待される役割について考察しています。次に、経営を維持するためには安定的な利益確保が重要であることから、第1章では、歯科医院の経営ノウハウとして、医業収益と医業費用、キャッシュフローの留意点について説明し、キャッシュフローについての理解を深めます。経営者自身がキャッシュフローの仕組みを理解することで、将来の増税や外部環境の変化に対応することが可能となります。また、少子高齢化により看過できない課題として「ヒト」の問題があります。これからますます職員の確保が難しくなることに鑑み、人事労務管理のノウハウも解説しています。第2章では、歯科医院経営で発生するさまざまな税金を取り上げます。節税対策は経営上の重要課題の一つですが、本章では、まず税金計算の仕組みを説明したうえで、税務戦略の考え方や納税スケジュール等について詳解します。第3章では、開業後に経営を維持していくためには、どのような目的や方向性を描き、何をすればいいのかについて、戦略を見出すヒントをまとめました。経営戦略の基本となるビジョンや目標の設定、患者さんへの対応、診療方針やそれに伴う設備投資の考え方、さらには事業の拡大もしくは承継を意識した法人成りについて、細かく取り上げます。また、経営改善事例として、実際に経営支援を行っている歯科医院の事例を6つ紹介し、より実践的な視点から理解できる内容にしています。

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