中小企業のための事業承継ハンドブック
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Ⅰ 事業承継概論10 また、議決権の取得に関して財産権の取得とは別に資金負担等が生じる場合があります。通常株式を取得する場合、財産権の取得に伴い、議決権が付随してついてきますので、議決権の取得だけを意識することはありません。ただし、将来の議決権確保のために新株予約権を活用して潜在議決権を今の段階から取得しようとすることを検討していますと、新株予約権を行使して財産権である株式を取得する時点であらかじめ定めた行使価格相当の資金負担が生じますが、新株予約権の付与時点でも新株予約権の価値に対して対価を支払う可能性があります。実際には新株予約権という固有の財産に価値を認めているので、財産権に対する対価を支払っているのですが、ストックオプション的な(報酬としての)新株予約権の活用でなければ理論的には議決権の取得のための行使に対価を支払っているのであって、議決権を担保するための一時金的な意味合いになります。実際に新株予約権を行使すると、新株予約権の取得対価は、行使した株式の取得対価に含められるので、最終的には財産権の取得対価となります。⑹ 「いつ」(When) この検討は主として、先代経営者の「相続」時点を軸にその前後の期間で検討します。これは、多くの事業承継対策のために準備されたスキームや法律が、「相続」時点の前後でその適用の可否が異なるためです。具体的には、以下のとおりの時間軸で検討します。なお、相続開始3年前をもう1つの区切りとしているのは、相続時からさかのぼって3年内になされた贈与は相続税の申告書上、当該贈与は贈与加算として相続による財産の承継があったものとみなされることによります(相法19)。贈与譲渡贈与(相続加算)相続・遺贈相続開始3年前相続時

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