35第1章 循環取引発生のメカニズムと会計上の論点—る出荷及び配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数をいうが、わが国国内における配送では数日程度の取引が多いものと考えられる。確かに、日々商品または製品を出荷するとして、出荷した商品または製品が顧客に到着し、顧客側で検収をし、当該商品または製品の支配が顧客に移転したと考えられる何らかの確証を得たうえで収益を認識する、いわゆる検収基準と、商品または製品が顧客に出荷された都度収益を認識する出荷基準の2つの基準の差は、前期末と当期末における数日間のことに過ぎないかもしれない。さらに、この数日間の間に認識された収益の額にそれほど重要な金額的な差がないとしたら、両基準により認識される当該事業年度の収益の額の違いは、全く重要性の乏しい誤差の範囲内でしかない。しかしながら、第3節で指摘したように、「出荷基準」は、極論すれば、商品または製品が顧客に実際に到着したか否かを別段意識しなくてよい基準であって、そこに最大の弱点がある脆弱な基準である。日本公認会計士協会会計制度委員会が、平成21年(2009)年7月に公表した「『我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)-IAS第18号「収益」に照らした考察-』(以下「中間報告」)では、企業会計原則がいう実現主義の要件を考慮した場合、「財貨の移転」は、通常、物品を買手の指定する場所に納入し、買手による検査が終了した時点と考えられることから、買手による物品の検査が終了するまでは実現主義要件の1つである「財貨の移転の完了」は満たさないという立場を採っている。さらに「対価の成立」要件についても、買手による物品の検査が終了するまでは通常満たさないので、あくまで実現主義を厳密に解釈する以上、買手による物品の検査終了時点で初めて収益を認識することができると結論付け、売手の出荷の日をもって財貨が買手に移転することが取引当事者間で明らかでない限り、出荷基準による収益認識は適切でないという見解を示している。中間報告は、実務で一般的に用いられてきた出荷基準について、現行の制度
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