29第1章 循環取引発生のメカニズムと会計上の論点—第4節 「収益認識に関する会計基準」と循環取引1.企業会計基準第29号の公表企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成30年3月30日、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下、「会計基準」という)及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、「適用指針」といい、会計基準と併せて「新会計基準」という)を公表した。第3節で述べた通り、わが国企業会計原則において実現主義の原則は規定されているものの、収益認識に関する包括的な会計基準はこれまで開発されてこなかった。一方、国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、平成26年(2014年)5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)を公表しており、IFRS第15号は平成30年(2018年)1月1日以後開始する事業年度から、Topic606は平成29年(2017年)12月15日より後に開始する事業年度から適用される。両基準は、文言レベルでおおむね同一の基準となっており、当該基準の適用後、IFRSと米国会計基準により作成される財務諸表における収益の額は当該基準により報告されることになる。第3節で述べたように、収益は、企業の経営成績を表示する上で最も重要な財務情報であるため、ASBJは上記の国際情勢を踏まえ、わが国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手し、公開草案を公表した後、適用上の課題等に対する幅広い意見を一般に求めた。その結果寄せられた意見等を基に、ASBJは最終基準の開発に着手、平成30年3月26日の同委員会において新会計基準等が承認され、その公表に至ったものである。なお、新会計基準は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業
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