監修に当たって 現在、わが国企業は猛烈な勢いで変化する経営環境の中に置かれています。ここでは、過去の実績や経験が必ずしも役に立つことはなく、自由な発想と果敢なチャレンジ精神に基づく最も効率的な経営が求められています。しかし、ここに来てわが国における各種の規制がその要請を阻害していることが明らかになりつつあります。 本書で取り上げる「合併、株式交換・移転、会社分割」は、企業組織再編を最も効率的なものとするための選択肢を提供しようとするものです。 まず、平成9年5月の商法改正では企業結合の有力な手法である「合併」手続の大幅な簡素化が図られました。続いて、平成9年6月の独占禁止法の改正により、原則持株会社が解禁され、平成11年6月の商法改正で持株会社の設立を容易にする「株式交換・移転制度」が導入されました。そして、このたび平成12年5月の商法改正で営業を分割し他の会社へ引き継がせる「会社分割制度」が導入されました。この一連の商法改正で、企業組織再編に関する法的措置はほぼ欧米並みになり、環境整備されたことになります。 ところで、これらの制度が実効性のあるものとして企業組織の再構築に活かされるためには、税法の整備が欠かせません。「株式交換・移転制度」に関する税法上の取扱いは、改正商法の施行に並行して租税特別措置法で手当てされました。一方、「会社分割制度」に関する税法上の取扱いは、改正商法の施行(平成12年末~13年初頭予定)に対処すべく検討が進められていますが、現在のところ明らかにされていません。さらに、企業組織関連税制の仕上げとして、経済界から強く要望されている「連結納税制度」の早期導入は、会社分割税制の導入を待って、その導入を検討することになっています。 本書は「合併、株式交換・移転、会社分割」という企業組織再編に関する法律・会計・税法を実務的な視点から検討することを目的としていますが、これらの税制改正議論の過程で明確になってきたのは、企業組織再編に関する会計的基盤がわが国では確立されていないことです。会計と税法はその目的を異にしますが、税法上の取扱いの基礎となるのは「公正なる会計慣行」に他なりません。このような意味から、企業組織再編に関する会計基準の整備の必要性を痛感します。
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