収益認識[会計・法務・税務]Q&A
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返品権付きの取引は例えば次の⑴から⑶を受ける権利を顧客に付与するケースが考えられます(適用指針84)。⑴ 顧客が支払った対価の全額又は一部の返金⑵ 顧客が企業に対して負う又は負う予定の金額に適用できる値引き⑶ 別の商品又は製品への交換このような返品権付の取引は従来、過去の返品率や原価率から減少する売上総利益の金額を見積もり、返品調整引当金として計上していました。当会計基準等適用後は返品調整引当金の計上は認められず、返品により減少すると見込まれる収益の額を見積もり、収益の額から控除することとなります。また、それに係る原価を返品資産として計上することになります。返品されると見込まれる部分の見積りは、最頻値法と期待値法のどちらか適切な方法で見積もることになりますが、各取引において返品されるかされないかを見積もる最頻値法で見積もるよりも、過去の返品率等合理的な方法で見積もった返品率を各取引に織り込む期待値法の方が結果として実際の返品額に近似すると考えられることから、実務上は期待値法を採用することが多いと考えられます。これに関しての税務上の取扱いは、事例の中で解説します。なお、正常品と交換するために欠陥のある商品等を顧客が返品することができる契約は、財・サービスに対する保証として取り扱います(Q3-12参照)。2…事 例(1)前提●小売業を営むA社は顧客に対して衣料品を販売している。●×1年においてA社の売上は100,000千円であった。●過去の実績から合理的に見積もった返品率と粗利率は、3%と10%である。●A社は商品の回収コストには重要性がなく、返品された商品は利益が生じる販売価格で再販売できると見込んでいる。75Chapter3

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