おわりに今回、本書の執筆にいたったのは、2018年7月に開催されたセミナーがきっかけでした。清文社の編集者である藤本優子さんに「会計事務所のクラウド化」を掲げた講演をお聞きいただき、書籍を通じて世に送り出していただくこととなりました。筆者にとって、清文社は特に思い入れが強い出版社です。というのも独立開業前の勤務税理士時代は、連結納税や組織再編メインの部門に所属し、連結納税のバイブル本ともいう『詳解 連結納税Q&A』を毎日のように読んでいたからです。そこで、今回出版の話をいただき、私を含め会計業界に従事する方々に何か1つでも感じていただけたらと渾身の思いで筆をとらせていただきました。とはいえ、この本を読んでいただいてわかるとおり、いわゆる清文社の専門書らしくありません。会計税務の専門知識の解説はもちろんのこと、条文番号が一度も出てこないという内容です。大原簿記学校で講師を務めていた頃も、教材の作成や講義に向け、まずは根拠条文を調べ、コンメンタール(法令解釈)で経緯などを根拠立てて積み上げることを日常としていました。ですから、清文社で本を執筆するにあたり、専門家然としなければならないのか。何やら小難しい文章で書くべきかなど、多少の葛藤があったのも事実です。本文では、筆者の事務所の会計業務のサービスを「立ち食いそば屋」と例えました。昔は、筆者も「料亭のイチ職人」であるという振る舞いだったわけです。もちろん、そこへのこだわりもありますが、やはり食べてもらってなんぼです。クラウド化とは結局、情報伝達をいかに円滑に効率的にしていくかです。そう考えると、筆者がこだわるべきことは明確です。小難しい言葉を使うことでも、税法をたぶんにご紹介することでもありませ
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