最新判例でつかむ固定資産税の実務
2/22

はじめに 近年、市町村税務担当部署による固定資産税の課税ミスが後を絶たず、「またか」「これでもか」とばかり報道される有様である。最近でも、小規模宅地等の特例が要件を満たしているのに適用されておらず合計数千万円もの過大徴収になっていたケースや、固定資産税滞納により公売にかけられた後に過大徴収が発覚したケース、分譲マンションで数百戸の過大徴収が40年間超行われていたケース等、数多く報道されている。 しかし、こうした背景から「税金のことだから」と相談されたとしても、高度に専門的・技術的な固定資産税について自信を持って答えられる税理士は、非常に少ないのが現実である。 相続にあたり土地評価を行ったことをきっかけに、税理士や納税者が固定資産税に疑問を持つ、というのが課税ミス発覚の一つのパターンであるが、最近の度重なる課税ミスの報道を目にした顧客は、毎年課される固定資産税に対して一層厳しい視線を向けるようになってきている。これは税理士にとっても決して「対岸の火事」ではなく、例えば最近では、大規模ビルに関する家屋の固定資産税評価額についてセカンドオピニオンを求める動きも増加しているため、これをきっかけに顧客流出にまで繋がる可能性も考えられるところである。また、税理士が相続税案件を扱う場合、固定資産税評価額を「所与のもの」と捉えがちであるが、固定資産評価基準等、その評価のメカニズムを理解すれば、より付加価値の高い顧客サービスが提供できるものと考えられる。 不動産業界も同様である。住宅の購入層が固定資産税について一層厳しい目を持つようになるなか、適切に対応できなければ新規顧客を逃がしたり、既存顧客の信用を失ったりしかねない。 今後も相続・相続税案件は増加していくことは間違いなく、企業からの固定資産税過払い返還の件数も増えていくことが想定される。そのようななか、固定資産税の理解を深めることが何よりも重要であるが、その一助となるのが、これまで蓄積された固定資産税をめぐる裁判例を参照することである。地方税のなかで

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る