税理士損害賠償請求事例にみる事故原因と予防策
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本書の位置づけ本書は税理士が行う通常業務の中で起こる身近な事故事例をまとめたものである。掲載事例はそのほとんどが税理士自身がその責任を感じている事故であるため、訴訟に至る事例はまれである。しかし、その対応を間違えれば、長年にわたって築きあげてきた依頼者との信頼関係も一瞬にして崩れてしまいかねない。身近な事故事例を確認することによって、日常業務に潜む事故のポイントをつかみ、同じ事故を繰り返さない仕組み作りに役立てていただきたい。本書における用語の意義(1)責任の所在税理士法における責任税理士法第1条には次のように定められている。第1条(税理士の使命)税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。第1条は、税理士に対し、納税義務の適正な実現を図るために、租税法律主義の主旨に基づいて、課税要件や租税法規の解釈について専門知識を有し、税務の専門家として納税義務者の信頼に応えるという専門家責任を求めている。民法における責任税理士が専門家責任を怠った場合、法律上は民事責任が生じる。契約関係がある場合の債務不履行責任(民法415条)と契約関係がない場合の不法行為責任(民法709条)である。12122
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