筆者の基本的なスタンスを述べれば、課税処分に対して特段の理由がないのにすべからく憲法違反であると主張するような立場には賛成できない。課税は社会の維持と富の再分配のために必要不可欠なものであると考えている。課税や税務行政に対して過度の反発をして大上段に構えた抽象的な議論を展開することは、税務争訟の場で、当該事案において問題となる個別具体的な課税関係についてのあるべき課税理論を追求するという専門家の役割を十分に果たせないことになりかねない。 とはいえ,上記のとおり、課税処分は無謬ではない。誤った課税処分が早期に適切に取り消されないとなれば、租税の徴収という重要な国家活動に対する国民の信頼が揺らぐ。わが国の国家財政の現状からすれば、国民負担としての税の重みは増えることはあっても減ることはないであろう。したがって、今後ますます、誤った課税処分に対して理論武装して戦うことのできる弁護士、税理士が、社会インフラとして必要となると思われる。 本書がそのような志をともに抱いて下さる弁護士、税理士の参考となれば、望外の喜びである。 なお、本書校正の段階で、同じ事務所に籍を置く黒田はるひ弁護士から有益な助言を頂いた。ここに記して感謝申し上げる。 平成30年9月本間合同法律事務所弁護士・税理士 坂田 真吾
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