民事・税務上の「時効」解釈と実務
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つまり、A単独による時効の援用自体は認められるものと考えられます。(2)援用できる範囲Aが単独で時効の援用をすることができるとしても、その援用の効果は、甲土地すべてに及ぶのかAの相続分の範囲にのみ及ぶのかについては、別途考えなければなりません。この点について、判例[12]は、時効の援用は自己が直接に利益を受ける限度で援用できると解するべきであるから、遺産分割協議で全部の取得が合意された場合等を除き、共同相続人は、自己の相続分の限度においてのみ援用できるとしています。つまり、Aが単独で時効の援用をすれば、Aの相続分の限度(遺言等がなく法定相続分であれば、2分の1)において効果が生じ、Aは、甲不動産の2分の1の共有持分を取得しますが、残りの共有持分2分の1は、Bが援用をしない限り、他人が有するままということになります。[12]最判平成13年7月10日判タ1073号143頁2191.贈与・相続における民事上の時効

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