民事・税務上の「時効」解釈と実務
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はじめに本書は、税理士の皆様が実務を行っていく上で知っておくべき「時効」制度について、税理士の先生から著者が実際にご質問いただく中で、理解が必要と考えられる事項を中心に解説するものです。民事上の時効については、あまり税理士に関係ないとも思われがちです。しかし、貸倒損失の判断、債務消滅益の計上、相続財産性、財産評価などは課税判断に影響を及ぼすものであり、税理士業務を遂行する上で、不可避な問題となります。また、事業承継対策などを行う場合には、株式の整理などにおいて、時効制度が大きな影響を及ぼす局面もあります。民事上の時効制度は、2017年に成立した改正民法の施行(2020年4月1日)により、消滅時効の時効期間などについて大きな変更があります。ただし、特に税理士業務に関わる売掛債権や貸付金債権などの消滅時効については、しばらくは旧民法での判断が必要になります。実務上、これらの権利について、新民法による時効期間による消滅時効の問題が発生するのは、2025年4月以降ということになるでしょう。したがって、本書では旧法・新法を区別しつつ、両者について解説します。一方で広く「税務上の時効」と呼ばれるものの中には、賦課権や更正の請求の除斥期間、徴収権と還付請求権の消滅時効があります。消滅時効については、民事上の時効と類似の制度となっています。税理士の先生が一般的に「時効」と呼んでいることの多い賦課権(更正、決定及び賦課決定を行うことができる権利)は、厳密には、時効ではなく「除斥期間」にあたるものです。税理士業務遂行上は、更正の請求の期間制限なども含めて、この「除斥期間」が問題となるケースがほとんどです。したがって、税務上の時効については、この除斥期間も含めて解説しています。その他、不服申立や訴訟提起の期間制限についても取り扱います。

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