税務調査事例からみる役員給与実務Q&A
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243第3章役員退職給与を巡る法人税の理論と実務る金額② 被相続人の死亡が業務上の死亡でないときは、その者の死亡時における賞与以外の普通給与(役員報酬等の合計額)の半年分に相当する金額 実際、業務上死亡した役員に対する弔慰金の計算に、上記相続税法基本通達の取扱い及び労働基準法*2に従い、普通給与(最終月額報酬)の36か月分(3年分)を用いることが肯定された国税不服審判所の裁決事例がある(国税不服審判所昭和51年4月26日裁決・TAINS F0-2-007)。 本件の場合、出張先での事故による死亡であるため、業務上の死亡に該当し、役員報酬等の合計額の3年分について弔慰金として、残額が役員退職給与に該当するものと取り扱うこととなる。(4)役員退職年金の損金算入時期 役員退職給与の損金算入時期は、通達によれば、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度を原則としている(債務確定基準、法基通9-2-28)。これは、役員への退職給与は会社法上、準委任契約に基づく業務執行の対価として支給されるもので、報酬の後払いとしての「退職金」ではなく、役員としての貢献を評価しての「退職慰労金」であることに基づく。したがって、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定しない限り、債務が確定したことにはならず、損金算入もできないこととなる。 ただし、例外として、退職給与の額を支払った日の属する事業年度においてその支払った額につき0000000000損金経理をした場合も、当該損金経理による方法を認める、とされている(支給日基準、法基通9-2-28)。さらに、役員退職一時金の分割支給の場合も、原則としてその未払の部分を含め*2 労働基準法第79条(遺族補償)によれば、労働者が業務上死亡した場合、使用者は平均賃金の1,000日分(3年弱)の遺族補償を行うべき旨が規定されている。
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