はじめに平成27年1月1日からの相続税の基礎控除縮減の影響で、多くの相談者が税理士を中心に相続コンサルタントのもとを訪れるようになりました。相続コンサルティングの現場には、税理士のみならず、弁護士・司法書士・行政書士・FP(保険募集人・不動産事業者など)・銀行・証券会社など様々な立場の方が実行支援をしています。その中でも相続税申告が必要なクライアントがまず相談するのは税理士であり、税理士へは相続の窓口業務としての立ち位置を期待するのが最近の流れとなっています。相続税申告や生前贈与対策の実行支援を行うためには、相続税・贈与税・所得税・法人税・消費税・その他税目に絡む個人法人間のクロスセクション税務、相続関連法務・不動産実務・金融機関実務など、様々な知識や経験が必要となります。つまり、税理士への社会的役割に対する期待が「相続税の専門家」から「相続の専門家」へと変遷しているといえます。本書は、私がこれまで自分自身で経験したこと、他の相続コンサルタント(税理士・FPなど)から相談された事例をもとに構成しております。その意味で、机上の空論ではなく現場に即した問題解決のための考え方・対処法を示せたのではないかと思います。もちろん税理士のみならず、FPをはじめとする相続コンサルタントの方々にとっても興味深い視点で執筆しておりますので、本書を読まれるに当たっては「税理士」という文言を各相続コンサルタントの立場に置き換えていただければと思います。本書の構成は全部で4章構成としており、各章は以下のような内容となります。第1章は総論として「税理士が担うべき立ち回り(税理士の立ち位置)」としました。窓口となる税理士が「相続の専門家」として必要となる問題解決ツールを示しています。相続という人間関係の特殊事情が絡んだ場合、経済的合理性で行動できなくなる場面に遭遇することが多々あります。「相続の専門家」としてヒアリングを行うに際して必須なのは何よりも「感情的配慮」と考えます。そのため、書き出しはここからスタートさせていただきました。第2章は「失敗事例から学ぶ対応策」として10事例を検討しています。全
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