租税回避をめぐる税務リスク対策
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連で、一般的租税回避否認規定の導入に関する議論も盛んに行われるようになってきているが、本書は、あくまで同族会社の行為計算否認規定(法人税法132条)および組織再編成にかかる行為計算否認規定(同132条の2)を中心とする現行法上規定された行為計算否認規定の適用について実務的な観点からの検討を行うものである。また、行為計算否認規定の適用要件の中でも、実務上、最もその解釈が問題となる「不当性」の要件にスポットを当てて、実務的な観点で検討を行うものであり、行為計算否認規定にかかる他の適用要件やいわゆる引き直しの問題等については射程においていない。ところで、平成28年12月8日に平成29年度税制改正大綱が公表され、その中で、新たに株式併合、全部取得条項付種類株式、株式等売渡請求が組織再編税制の対象とされるなど、組織再編税制に関して大きな改正が行われることが明らかにされている。この税制改正に伴い、法人税法132条の2についても、その適用の対象となる組織再編成の種類が増えるなどの改正が行われることが予想されるが、本書において主に検討の対象としている「法人税の負担を不当に減少させる結果となる」との文言に修正がなされることはないと想定され、平成29年度税制改正によって本書の記載内容に大幅な修正が必要となることは想定していない。しかしながら、適格組織再編成に該当するための要件の改正の影響により、本書の記載が平成29年度税制改正の適用後は当てはまらないような場合が生じる可能性があることについては、ご留意いただきたい。本書は、あくまで実務の上で有用であることを旨としていることから、厳密で体系的・論理的な法解釈とはなっていない点も多々あると思われるが、実務的な観点および実務的な対応についてのわかりやすさを優先したいとの筆者の思いに免じて、その点はどうぞご容赦願いたい。

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