租税回避をめぐる税務リスク対策
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80第2編 「不当性要件」についての実務的な観点からの検討織再編行為が実行されたものと認定しているものと考えられるのである。言い換えれば、最高裁は、ヤフー・IDCF事件について、法人税の負担を減少させることを目的とした、いわば、タックス・ドリブンの組織再編成として計画され、実行されたものであるとの認定を行ったと考えられるのである。そして、このような法人税の負担を減少させることを目的として組織再編成に係る行為が計画され、実行されたということが、最高裁が導いた結論にとって重要なポイントとなったように考えられるのである。4課税当局の主張するヤフー・IDCF事件の構図最高裁がこのような認定を行ったのは、審理の過程において課税当局側や納税者側から提出された関係証拠に基づくものであり、課税当局においても基本的には同様の認定を行っていたものと推測される。さらにいえば、課税当局が、税務調査の過程で得た情報および資料を前提として、税務調査の時点で、問題となっている組織再編成に係る行為が、IDCSの未処理欠損金額を余すことなく活用することによってヤフーやIDCFの法人税の負担を減少させることを目的として行われたものであるとの心証を得たであろうことは容易に推測できる。課税当局が現実に更正処分を実施するまでには慎重な考察が行われ、種々の論点が検討されたものと考えられるが、税務調査の過程で、問題となっている組織再編成が法人税の負担を減少させることを目的として計画され、当該計画に基づいて実行されたものであるという心証を持ったことが重要なポイントとなっていることは想像にかたくない。実際、ヤフー事件第一審判決において被告である課税当局側の主張として記載されているところによれば、課税当局側は、本件提案について、IDCSの未処理欠損金を漏れなくソフトバンクグループ内で活用可能とするために、IDCSの未処理欠損金約666億円のうち、繰越期限の迫った約

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