租税回避をめぐる税務リスク対策
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4第1編 行為計算否認規定の適用の要件平成28年2月に、法人税法132条および同132条の2の適用の可否が問題となった事案に対する最高裁判所(以下「最高裁」という)の判断が相次いで出された。まず、平成28年2月18日、最高裁は、日本アイ・ビー・エム株式会社1(以下「日本IBM」という)が行った自己株式の買取りにより、その親会社である有限会社アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス(以下「IBMAP」という)に、みなし配当の額に相当する譲渡損失が発生し、繰越欠損金として計上された後、連結納税制度の適用後に当該繰越欠損金が損金に算入されたことについて、法人税法132条1項に基づく否認の可否が問題となった事件(以下「IBM事件」という)について、課税当局側の上告受理申立てを不受理とし(以下「IBM事件最高裁決定」という)、法人税法132条1項の適用を否定した原審(東京高判平成27年3月25日訟月61巻11号1995頁、以下「IBM事件控訴審判決」という)が確定した。また、同月29日、最高裁第一小法廷は、ヤフー株式会社(以下「ヤフー」という)が、100%子会社であるソフトバンクIDCソリューションズ株式会社(以下「IDCS」という)を吸収合併した際、IDCSから引き継いだ繰越欠損金の損金算入について、法人税法132条の2を適用してこれを否認する課税当局の更正処分(以下、当該更正処分に係る事案を「ヤフー事件」という)を適法とした原審(東京高判平成26年11月5日訟月60巻9号1967頁。以下「ヤフー事件控訴審判決」という)に対してなされたヤフー側の上告を棄却する判決(最判平成28年2月29日裁判所時報1646号5頁。以下「ヤフー事件最高裁判決」という)を下した。また、同日、最高裁第二小法廷は、IDCSの新設分割によって設立された株式会社IDCフロンティア(以下「IDCF」という)が、当該新設分割が非適格分割に該当するとして計上した資産調整勘定の償却により1 当事者の名称については、いずれも、原則として、問題となっている取引がなされた当時のものであり、その後、社名変更等がなされている場合もあり得る。

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