44その他受贈者となる者との合意により成立するという特徴があります。世代間の資産承継という目的は同じなのに違う手続・制度が設けられているのには、当然理由があります。それはどのようなものなのでしょうか。生前贈与、死因贈与の順に見ていきましょう。 生前贈与が行われる場合移転する資産が同じなら、贈与よりも相続のほうが税金が安くて済む(贈与税のほうが相続税より高い)というのが一般的な理解ですが、生前贈与でも基礎控除により1年に110万円までは贈与税は課されません(この「1年110万円以下」ルールは贈与される側について判断されます)。また、それを超える場合でも、一定の場合には相続時精算課税制度を利用することで一定の節税効果が得られます(→「⑤相続にまつわる税務あれこれ」)。ただし、生前贈与であっても、「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として」相続人に対して行われた場合には、特別受益として、原則、持戻しの対象となります(民903Ⅰ)。それを希望しない場合、つまり、生前贈与で相続人の一人に渡したものを遺産分割時に相続の前渡しとして評価させたくないというのであれば、遺言(民903Ⅲ)や意思表示など明確な形で持戻しを免除する旨を示しておくべきでしょう(持戻しの免除は、黙示のものも認められるのですが、これは相続開始後の評価の話です)。持戻し免除の意思表示も、各相続人の遺留分を害することはできないという点は注意です(民903Ⅲ)。なお、かなり極限的なケースですが、相続欠格(民891)の場合に宥恕を示す方法として生前贈与という方法がとられることがあります。というのも、相続欠格は廃除(民892)と異なり、いったん、民法891条所定の場合に該当してしまうとこれを取り消す方法がありません。また、この定めは受遺者の場合にも準用されているので(民965)、相ただし、今次の相続法改正による遺留分制度の改定に伴い、この表現は削除されました(→256頁)。第1章相続開始前の道
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