海外財産・海外居住者をめぐる相続税の実務
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第4章/海外の相続手続114(4)個別財産の共同所有制度 夫婦財産制の他、個別の財産の共同所有制度がいくつかあります。 米国では、日本の不動産の共有とは異なる考え方で、合有財産権(Joint Tenancyジョイント・テナンシー)、共有財産権(Tenancy in Common)、夫婦合有財産権(Tenancy by En-tirety)、夫婦共有財産権(Community Property)といった財産の所有形態があります。これらの合有財産は、合有権者の1人が死亡した場合には、合有財産は相続財産とならずに、生存する他の合有権者に帰属します。プロベートを避けるため、また、遺産税対策として一般的に採用されています。 また、金融口座についても、プロベートを避けるため生存者取得権(Survivorship Ac-count)のあるジョイント・アカウント(Joint Account)、死亡時受取人指定口座(Payable on death Account)を設定する、といった対策が行われています。▶▶▶2ジョイント・テナンシー(1)ジョイント・テナンシー ジョイント・テナンシーは、米国の不動産の所有形態でよくみられる制度です。 日本の不動産の共有とは異なる制度で、合有財産権といわれ、次のような特徴があります(*州によって取扱いの異なる可能性があります)。❶成立要件 2名以上の者で同時に同一の権利を共同で所有する権利をもつ財産の所有形態であり、各合有財産権者は、同一の不動産に対して均等の権利を有します。❷生存者への権利の帰属 権利者のうち1人が死亡した場合には、その財産権は生存している権利者に移転します。合有財産権利者が死亡した場合には、相続手続を経ずに、自動的に生存している合有財産権利者が所有者となります。 このため、死亡した際に、プロベートを経ることなく生存している合有者に財産を移転できるため、米国ではプロベート回避の対策としてジョイント・テナンシーが普及しています。

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