中小企業における「株式」の実務対応
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32個人株主は様々なトラブルを引き起こす可能性を秘めた存在でもあります。そのため、余計な分散を未然に防ぐとともに、機会があれば安定した受け皿へ移動(集約化)することを意識しておくことも大切な視点となります。この「個人株主が保有する株式の分散防止と集約化」については、第5章で詳述します。常時必要な視点 上述の通り、「経営者の保有株の円滑な承継」と「個人株主が保有する株式の分散防止と集約化」が中長期的な視点として必要になるのは、そもそも経営者が安定した経営権を確保するためです。 経営者が常に安定した経営権を確保したうえで企業を継続・発展させていくために、経営者が保有する株式を、次を担う後継者に円滑に承継する必要があるのです。また、「個人株主が保有する株式の分散防止と集約化」についても同様です。まずは経営者が安定した経営権を確保し続けることができるようにすることが一番の目的になります。もっとも、個人株主は一人ひとりが保有する株式の比率は小さいことが多いため、経営権を揺るがすほどの大きな影響を与えるケースは限られますが、個人株主が引き起こすトラブルによって、経営者が安心して経営に集中できなくなってしまうことは現実に生じています。経営者が安定した経営権を確保するために、また、経営者が安心して経営に集中するために、「個人株主が保有する株式の分散防止と集約化」という視点が大切になるわけです。そして、経営者が安定した経営権を確保することが、中小企業が中長期的に継続・発展するための基盤になるのです。 以上からすると、中小企業が直面する株式面の課題を検討するに際して、まず常に満たされるように考えなければならない視点は「経営者による安定した経営権の確保」であるといえます。これは企業が継続する常時必要な視点2

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