中小企業における「株式」の実務対応
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は じ め に 中小企業においては、普段の経営のなかで自社の株式について意識する場面はあまりないのではないでしょうか。 ところが、中長期的な視点で考えるとそうもいかなくなってきます。中小企業の株主は個人が主体であることが多く、また、個人一人ひとりが決して無視できない存在であるために、様々な課題に直面することになります。 この株式に関する課題に取り組む一番の目的は、安定した経営を継続することで企業の継続・発展の基盤とすることですが、それは、経営者の方が自社の株式のことに気を取られることなく、安心して経営に集中するためでもあります。株式で生じたトラブルの解決には、けっこうエネルギーを使うものなのです。相手のある話ですし、経営権や財産権のみならず、背後にある人間関係も影響してきます。親族をはじめとする関係の近い人たちも多く、精神的にプレッシャーがかかることも少なくありません。トラブルに振り回されてしまうことのないように、事前に対策を施すのが望ましいといえましょう。 もちろん、中小企業の株主構成を考えるにあたっては、絶対的な解が存在するわけではありません。しかし、望ましい視点や方向性はあると考えます。そのうえで、中長期的に自社の株主構成はどのように変化していくのか、それに対してどのような対策をしたらよいのかを検討し、それに向けて打ち手を考えていくことが大事です。打ち手を考え、実行に移すまでには時間がかかります。そして、この課題は経営者の周りの方ではなかなか進めることができないものです。経営者ご自身が主体的に取り組まなければ前に進まない経営課題なのです。経営課題として捉え、自社の将来の株主構成を考え、それに向けて打ち手を考える、そして、これらを先送りせずに主体的に取り組む、といった姿勢が何よりも

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