「新・事業承継税制」徹底解説
2/20

はしがき 平成21年度に創設された事業承継税制は、使いやすくするために、平成22年度、平成23年度、平成25年度(平成27年度施行)、平成27年度、平成29年度改正を経て、この間、基本的に納税者に有利な制度変更が積み重ねられてきた。 更に平成30年度改正においては、贈与者(被相続人)の複数化、後継者の複数化、適用対象株式3分の2上限の撤廃、贈与税のみならず相続税においても100%の納税猶予という大幅な拡充が、今後10年間の特例として講じられた。 これらの改正により、事業承継税制に対する期待が高まっており、この制度の適用に向けて検討を進める企業が増えることが想定される。 しかし、一方でこの制度は難解であり、多数の選択肢の中で適切な選択を行うに当たっては多くの留意点があるため、これらの事項を網羅的に解説した。 本書は、平成30年4月の法施行以後、財務省の解説、国税庁の通達改正、中小企業庁の申請マニュアルの公開・改訂等を受けて、平成30年10月1日現在の法令・解釈に基づくものである。 また、他方で遺留分の減殺請求権に係る民法改正も平成31年7月1日より施行される見込みである。新しい民法(相続法)においては、同日以後の相続から遺留分侵害額請求の対象となる贈与は、原則として相続開始前10年以内の贈与に限られることになるので、この意味からも企業の成長が見込まれる場合は、早期の贈与の実行が望まれる。 ところで、後継者への株式の贈与について事業承継税制の適用を受ける場合、従来の選択肢は暦年課税贈与のみであったが、平成29年度改正により相続時精算課税贈与の選択も可能とされた。 この点は財務省の平成29年度税制改正の解説において明記されているように、仮に全部期限確定となった場合の贈与税額と、相続時に精算される相続税額を比較すれば明らかに相続時精算課税贈与が有利である。しかし、贈与税の納税猶予(特例制度)適用中に、業績悪化等により低い株価で自社株式を譲渡した場合には、納税猶予額の一部が免除されるものの、相続時精算課税贈与を選択している場合には、贈与者の相続において、贈与時の株価で相続税が計算されてしまう(業績悪化等が生じた場合でも救済されない)ため、必ずしも相

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る