グレーゾーンから考える相続・贈与税の土地適正評価の実務
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490第7章 特殊な土地の評価争点1 評価通達によって評価することが「著しく不適当」な場合においては、他の合理的な評価方式によることになる。では、どのような場合が著しく不適当に該当するのであろうか。 裁判例においては、租税回避の問題と評価の問題の2つの理由が挙げられている。租税回避の防止 第1は、納税者が、路線価と時価の乖離を利用した租税回避行為を行った場合に別の評価方式によることが許されるというものである32。 通達に定められた評価方式を画一的に適用するという形式的平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかな場合には、別の評価方式によるものと解されている(東京地裁平成4年3月11日判決〔税資188・639〕、東京地裁平成7年7月20日判決〔税資213・202〕、東京地裁平成11年3月25日判決〔税資241・345〕など)。適正な評価を行うための評価通達6の適用 第2は、土地に通達が予定していない個別事情が存在し、画一的な評価基準によると適正に時価を表すことができない場合に別の評価方式によることが許されるというものである。 相続税法における「時価」は、客観的な交換価値を意味することから、通達に従って評価した金額が「時価」の範囲内であれば適法であるが、これが他の証拠によって「時価」を超えていると判断された場合には違法となると解されている(名古屋地裁平成16年8月30日判決〔LEX・28092607〕)。 したがって、納税者が反対証拠を提出して通達に基づく課税処分の適法性を争うことは妨げられないし、その場合には、通達の内容の合理性とその証拠を比較考量して、どちらがより法令の趣旨に沿ったものであるかが判断されることとなる。 平成4年の国税庁事務連絡(路線価等に基づく評価額が「時価」を上回った場合の対応等に12著しく不適当とはどのような場合か32 租税回避とは、「私法上の選択可能性を利用し、私的経済取引プロパーの見地からは合理的理由がないのに、通常用いられない法形式を選択することによって、結果的には意図した経済的目的ないし経済的成果を実現しながら、通常用いられる法形式に対応する課税要件の充足を免れ、もって税負担を減少させあるいは排除すること」をいう(金子宏『租税法(第18版)』(弘文堂、2013年)121頁)。
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