Ⅰ 経営承継法(民法特例)制定の背景9甲→A自社株式贈与⬇除外合意⬇株式価格上昇甲死亡甲(3,000万円)甲(3,000万円)基礎財産(3,000万円)不 動 産A(3,000万円)除外合意A(1億2,000万円)自社株式BC 甲 :先代経営者 A :後継者B・C:非後継者甲→A自社株式贈与⬇固定合意⬇株式価格上昇甲死亡甲(3,000万円)甲(3,000万円)A(3,000万円)基礎財産(6,000万円)不 動 産A(3,000万円)固定合意A(増加分9,000万円)自社株式BC 甲 :先代経営者 A :後継者B・C:非後継者① 除外合意 後継者が現経営者から贈与等によって取得した自社株式について、他の相続人は遺留分の主張ができなくなるので、相続に伴って自社株式が分散するのを防止できます。② 固定合意 自社株式の価額が上昇しても遺留分の額に影響しないことから、後継者は相続時に想定外の遺留分の主張を受けることがなくなります。(出典:「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」中小企業庁を一部加工)例えば、上の図のような場合には、先代経営者甲から後継者Aに対して経営権と自社株式が贈与され、その後、甲の相続開始時点においては、自社株式の評価額が4倍に増加しています。このような場合、税法上は特例事業承継税制や相続時精算課税贈与の制度を適用するなどすれば、相続税の課税において、自社株式の評価額は贈与時の3,000万円が持ち戻されるにすぎません。ところが、民法上は、B及びCが有することとなる遺留分減殺請求権(民法改正後は遺留分侵害額請求権)の基礎となる金額は、相続開始時点の評価額である1億2,000万円なのです。これでは、後継者Aは、B及びCの遺留分を増額させるために会社を成長させたことになってしまいます。場合によっては、増額した遺留分のために自社株式を手放さなくてはならないことも想定され、却って会社経営を危うくさせる可能性もあるのです。このような弊害に対応するために、経営承継法(民法特例)が平成20年10月から施行されています。
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