税理士のための取引相場のない株式の評価と対策
15/20

Ⅳ 国税庁方式による取引相場のない株式の評価額との関係19た上で合意時価額が相当であることの証明が求められることになります。経営承継法(民法特例)の記載によると、概略上記のように考えられるのではないかと思います。贈与税の申告において、合意時価額が評基通で算定した評価額よりも高い場合には、当然評基通で算定した評価額を採用するでしょう。評基通総則6項の適用を否定しきれはしませんが、実際上、問題になることはあまりないように思われます。問題となるのは逆のケースで、評基通で算定した評価額が、合意時価額よりも高い場合です。【設例】経営承継法評価ガイドラインで証明された固定合意における合意時価額が、相続税評価額よりも低い次のようなケースは、A論とB論のいずれを採用すべきでしょうか。合意時価額3,000万円<相続税評価額9,000万円A論:合意時価額3,000万円を採用して贈与税申告する。B論:相続税評価額9,000万円を採用して贈与税申告する。<A論>経営承継法評価ガイドラインにおいては、「合意時価額が贈与税の計算における価額を下回ったときには、いずれが『相続税法上の時価』として妥当であるか等を見極めて納税申告することが望まれる。」と記載されており、評基通によれば『相続税法上の時価』は「課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。」とされていますが、同通達総則6項は「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定められています。事例のケースは、いわゆる「特別の事情」がある場合に該当し、総則6項によって財産評価基本通達によらないこともできるとするものです。たとえ同族間の贈与である場合でも、経営承継法(民法特例)における固定合意は、相続財産の分割を目的とするものですから、いわば遺産分割に当たって利益が相反する者同士の間の価格合意です。また、「経営承継法評価ガイドライン」に則って専門家が証明している価額が基になっているのですから、合意時価額を『相続税法上の時価』と捉えて差し支えありません。₃.実務上の問題点

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る