第2章 遺留分に関する民法特例と取引相場のない株式評価の必要性18低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」に該当するとして、当該譲受けの対価と税務署長が独自に算定した当該株式の時価との差額に相当する金額を課税価格とする贈与税の決定処分等をした事案につき、評基通による価額を上回る数件の取引価額があったとしても、評基通6項の適用について消極的に解しているものです。(「特別の事情」については21ページ、125ページアドバイス参照)【引用判決②東京地裁平成15年₂月26日】「本件○○町の土地の価格算定に際しては、取引事例比較法による比準価格は無視できないものの、これが収益還元法による収益価格を上回る規範性を有しているとは認め難く、双方を同等に用いるべきものと考えられる。そして、規準価格については、評価に直接反映させるべきでないことについて当事者間に争いがない上、前記のように乙公示地の公示価格が激しく変動している状況からすると、これを規準として用いることは相当でないというべきである。そうすると、本件○○町の土地についての更地価格は、適切に算定された比準価格と収益価格を単純平均して求めるのが相当である。」判決は、相続した宅地を評基通(路線価)によらない価額に基づいて相続税の申告をしたことが一部適法と認めています。一方、非後継者との関係において、国税庁方式とそれ以外のそれぞれの評価方式について、情報の共有が図られている中で行われた固定合意であれば、国税庁方式を採用することについても問題はないと考えられます。また、固定合意における合意時価額が専門家によって相当であると証明された場合には、その価額によって評価会社の関係者間で売買等の取引が行われることも想定されます。その場合には、相続税法上の課税問題のみならず、所得税法上及び法人税法上の課税問題が生じる可能性があります。しかし、所基通 23~35 共-9 及び法基通 9-1-13 においては、適正と認められる売買価額や純資産価額等を参酌し、通常取引されると認められる価額をもって評価することとされています。また、所得税及び法人税の各基本通達ともに、一定の条件の下で評基通の準用を認めているという仕組みですから、合意時価額が、各通達にいう「価額」に相当するものとして、課税上も重視される可能性があります。以上の各税目の取扱いに照らせば、国税庁方式は、常に画一的で固定的(形式的)な評価方式にこだわっている訳ではなく、弾力的に取り扱うことを明らかにしています。このため、固定合意において専門家が相当であると証明した合意時価額が、合意後の課税関係においても重視される可能性も考えられるのです。ただし、そのために、諸条件を精査し₂.国税庁方式の役割
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